五感に伝わる美しい小説

今回は最初に読んだ時に感じた強い印象を思い出しながら、本の感想を書いてみました。「羊と鋼の森」著:宮下奈都さんです。

主人公の外村は一人のピアノ調律師との出会いをきっかけに自分もピアノ調律師になります。外村はもともと、特にピアノ自体に興味はなく、その存在を一般的に知っているだけだったと記憶しています。
やりたいと思うことを見つける出会いをした主人公、何ともうらやましいです。

調律師として仕事を始めた外村が悩みながら成長していく話ですが、読み手の心を乱すことなく、やさしく読める物語です。

調律という仕事と外村の繊細な感情、故郷の森を思い出す場面などから読んでいるだけでも五感に伝わる美しい小説です。

読んでいる時は梅雨だったので外ではかなりの雨が降っていました。
いつもなら「雨の日はいやだなー」となるのですが、この時は本を読んだ後に外に出たくなりました。

外を散歩すると読んだ後の余韻が残っていて、空気や緑、雨の音をとても綺麗に感じ、すがすがしい気持ちになったのを覚えています。

文章からこんなに空気や自然を感じ取れたのは初めてのことです。タイトルの意味も納得できる内容となっています。

読んだ後は、何年経っても大切にしたい感覚が残っています。

思い出したら、なんだか幸せな気持ちになってきて再読したくなってきました。もうすぐ読んだ時の季節に近づいてくるので、同じ時期に同じ感覚を満喫しようかな。