雨男の死神はなんか憎めない

伊坂幸太郎さんの「死神の精度」はなんとも不思議な感覚のする小説。

こちらは6編の短編。
以前に短編より長編が好きだと書いていたがブログを読み返すと結構、短編も多いことに気付く。

死神たちは情報部とやらに指示されて対象を調査する。

その調査とは死が確定している対象である人間の側にいて、その死が“可”か“不可”かを判断するというもの。それによって、死ななくてすむ場合もある。

死神は人に姿を変え対象と接触する。

年齢も顔も自由だが、いつも“千葉”と名乗っている。

何千年も存在しているのに、言葉や物事にうといので人との会話はおもしろいやり取りとなる。

千葉の仕事の時はいつも雨でなんか可哀そうなのだが、本人には不快とかの感情がないので気にしてないようだ。そのくせ音楽が好きだったりする。

ヤクザが出てくる「死神と藤田」・恋愛ものの「恋愛で死神」・逃亡犯とのドライブ「旅路を死神」の3編が特によかった。

伊坂さんの作品は何冊か読んでいるが、どれも登場人物に味があるなといつも思う。
ヤクザの藤田も恋をする荻原も人を殺して逃亡する森岡もなんか好きになってしまうのだ。

誰が死んで誰が生きているのか。たとえ死んでしまっても可哀そうとかはあまり感じず、別の深い感覚が残る。

伊坂さんの作品にはクラシックがよくでてくる。

あまり詳しくはないのだが、本書でバッハの「チェロの無伴奏組曲」を表現する文章がとても良いと感じた。

「恋愛で死神」の荻原の恋愛についてのセリフも良いなと思って書きとめてしまった。

この本に“春”という青年が出て来るのだが彼は別の本「重力ピエロ」の登場人物だ。

こういう繋がりは小説ならではだけど、やっぱり嬉しくなってしまう。

続編の「死神の浮力」というのもあり、こちらは長編。今回は短編の方がお気に入り。