宮沢賢治が好きです~「銀河鉄道の父」を読む~

2017年に「銀河鉄道の父」が発売されました。

私の知識では宮沢賢治の父親は質屋をしていて、息子の賢治はそれを恥じていたのではないかというものでした。
それで気になって読んでみたら、とても良かったのでお気に入りの一冊となりました。

学生の頃に『銀河鉄道の夜』を読んでから宮沢賢治が好きです。
いまでもずっと、作家では一番好きだと思っています。
なぜか、宝物のようなイメージがずっと心に残っているのです。
これは彼が光を感じさせる綺麗な作品を書くからなのかもしれません。

それ以来、スーパーファミコンで「イーハトーヴォ物語」をしてみたり、テレビで宮沢賢治の特集が放送されれば喜んで視聴したりと色々していました。

ですが私は『銀河鉄道の夜』を読んだのは一度きり。
再読すらしていません。
理由は学生の頃の気持ちのままの読了感でいたいからです。
もともと再読や再放送の視聴などをあまりしないタイプなのですが、それとは別に大人になってから読むと、また違った感覚になるのが怖いのです。

さらに教科書に載っていた作品以外は、きちんと読んだこともありません。
しかし有名であるのと、常にアンテナを張っているのもあり自然と情報が入ってくるので多くの作品の題名も内容も大体わかるといった感じです。
”にわかファン”というやつかもしれません。

今年の5月に「銀河鉄道の父」の映画が始まるためCMで見かけるようになり、また読みたくなったので、めずらしく再読をしました。


銀河鉄道の父」を読んで

この本は作者である門井慶喜さんが、宮沢賢治の父親について細かく調べ、賢治の父親を主役として書いた宮沢一家の物語です。

宮沢賢治の父の政次郎は家業を継いで質屋を営み、奥さんと子供5人を持つ一家の大黒柱です。明治時代で結構なお金持ちの家庭です。
1896年に最初の子供の賢治が生まれたところから話は始まります。

政次郎は普段は厳格に振舞っていますが、賢治が病気になればつきっきりで看病したりと、実にやさしい父親です。

賢治はとても頭のよい子供でしたが、成人するにつれ何者にもなれない自分に苦悩します。父親に度々お金を無心し、散々世話になっておきながら反発も繰り返します。
読んでいる私も、賢治の父親の気持ちになり途中で心配になってきました。
一体何を考えているのだろう、大丈夫なのか?と。
ですが賢治は中学生頃から物語を書くことに情熱を燃やしていたという賢治視点の章もあり、作家・宮沢賢治をつくる土台に触れ、少し安心しました。

にわかファンの私は、賢治が大好きだった妹のトシが若くして亡くなってしまい、彼の人生にあまり明るいイメージを想像してはいませんでした。

しかしこの本は、賢治の父親の視点から書かれていて、一般家庭にも言える父と息子の複雑な関係を丁寧に表現しているほか、家族の会話や父の心の声など、笑える箇所も多く楽しく読めました。
親というものは本当に大変なのだなと感じ入ると共に、父である政次郎と妻のイチが5人の子供たちを大切に育てたのだなと思いました。
父親の愛情がひしひしと伝わってきます。

作家でもあり父親でもある作者が賢治とその父のどちらにも共感したというのも、とても納得できます。門井慶喜さんの他の本も読んでみたいです。

宮沢賢治の他の本もたくさん読みたい・・・再び、賢治特有の綺麗な文章に触れたいとも思わせてくれる、そんな作品でした。