ひたすら歩き続ける青春ストーリー

10年前に読んだ「夜のピクニック」(著・恩田陸さん)の感想メモが残っていました。良かった記憶があったので、細かいところを思い出すべく再読してみました。

物語は西脇融と甲田貴子という二人の高校3年生、それぞれの視点で描かれています。二人の通う高校では毎年「歩行祭」という、一晩で80㎞を歩く行事があるのですが、ひたすら歩いている中での生徒同士の友情や恋愛についての会話、二人の複雑な心情などで綴られている一冊です。

二人の間には複雑な事情があるのですが、再読のために答えを知っているにも関わらず展開も飽きずに読めました。

以下は自分事ですが、一度目に読んだときには考えなかったことがいくつかありましたので、備忘録として少し書いておこうと思います。

初めて読んだときは、「夜のピクニック」と題されている歩行祭に少し憧れがありました。

私は学生の頃に、皆が嫌がるマラソン大会が、なぜか好きでした。
ですが運動は得意ではなかったので、文武両道の友人にくっついて走ったら上位をとれたという経験もあり、近いものを感じたのかもしれません。

初めて読んでから10年を経た今回は、以前には気にならなかった体力的にきつい歩行祭の描写に自分の年齢を感じました。ですが再読での印象の違いを楽しめました。

友達と星空について語り合っているシーンで、実家でお菓子屋を営む友人が商品の一つに水羊羹に金箔を流し込んだ”天の川”なるものがあったと話していました。

それを読んだときに、子供の頃に住んでいた宮城県で満天の星空といくつもの流れ星を見た記憶が鮮明に思い出されました。

更にコロナで初めての緊急事態宣言が出された2020年の4月~5月にSNSでお菓子作りが流行っていて、私も星座や星の世界を表現したスノードームのようなゼリーを作ろうかと模索していたことを思い出しました。
お菓子作りはほとんどやったことがないので、今度チャレンジしてみようかと思います。

物語の中では、融の友人の戸田忍という生徒が、気障だけれど深いセリフを何度か言っています。
その一つに、本を読むタイミングについての内容があります。

学生の頃や若い時にこういう本に出会えると、いい思い出として残るのではないでしょうか。

高校生たちの会話は実に大人でやさしくて、深いです。
読後感の良い青春ストーリーでした。